焼き鳥一家、柳橋へ!先代のトンデモエピソード

 修行先を追い出され……

「柳ばし 鳥茂」は東京で三代にわたって鳥を焼いてきた〝焼き鳥一家〟です。

先代の父(私の祖父)が、新宿で「鳥茂」を開業して以来、親戚一同が東京のあちこちで焼き鳥店を構えています。「鳥茂」もそのひとつですが、成り立ちは格好のいいものではありません。

創業のキッカケは、先代が修行先を追い出されたこと。

「ウチじゃ、おめえの面倒は見きれねえ。てめえの店を持て」

修行先でワガママ放題だった先代が愛想をつかされ、昭和41(1966)年に始めたのが「鳥茂」でした。

店を放り出し麻雀三昧

一応、自分の店は持ったものの、そのくらいで先代のワガママ癖は直りません。店は女将やほかの職人にまかせて、自分はレジの金を持って麻雀を打ちに出かける始末。

今の時代なら真っ先に潰れてもおかしくないような経営でしたが、当時は世の中にも余裕があった時代。浅草橋にも「高砂部屋」や「九重部屋」といった相撲部屋があり、また柳ばし界隈が花街でもあったので、それでも誰かがお金を落としてくれて、お店をおおらかに育ててくれていたのです。

振り返ればデタラメなはじまりでしたが、変わらず店を愛してくださる常連や、遠方からのお客さんに支えられて、なんとか今日まで続けていくことができました。昔のようなデタラメもなくなり、今では老舗焼き鳥店として変わらぬ地域の味を伝えています。

柳ばし 鳥茂

原田 久美子(現女将)

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